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不登校の原因は一つではない|理由がわからないときの整理と支援の考え方

「友達とは仲がよさそうなのに、どうして学校へ行けないのだろう」「理由を聞いても、わからないとしか言わない」「原因を解決すれば、また通えるのではないか」。お子さんが学校を休み始めると、理由を知りたいと考えるのは自然なことです。

教員として子どもを見るときと、母親としてわが子を見るときでは、見えてくるものが違います。教員であっても、わが子のこととなると、戸惑い・悩み・すぐには答えを見つけられないことがありました。

不登校の原因を一つに絞ろうとすると、本人が感じている負担を見落とすことがあります。最初に休んだきっかけが解消しても、欠席中に生まれた不安や学習への心配が残っている場合もあります。

この記事では、

・不登校の原因を整理する4つの手順
・原因がわからなくても始められる支援
・保護者・学校・支援者で共有するメモの例
・よくある質問

などを、神戸・御影の個別教育教室Think+の代表 / 橋本 加奈が解説します。

原因を並べるだけでは見えにくい不登校の背景を、時間の流れ、場面、本人の感じ方に分けて整理します。家庭や学校で相談するときに使える質問例と、情報を支援へつなげる方法も紹介します。

※不登校の定義や、家庭での対応・学習・進路を含む全体像は、「不登校とは?」で解説しています。本記事では、原因や背景を整理し、具体的な支援につなげる方法を詳しく扱います。

 

今回の記事の内容

不登校の原因を考えるときは「きっかけ・背景・現在の負担」を分ける

不登校の原因として、人間関係、学校との相性、学習面の不安、心身の不調、環境の変化などが考えられます。ただし、項目に当てはめるだけでは、その子に何が必要なのかまではわかりません。

そこで、相談の際は次の三つに分けて振り返ってみてください。これは診断や正式な分類ではなく、情報を整理するための考え方です。日々の授業でも、子どもの行動には、その子なりの理由や背景があると感じます。

例えば、授業中に発言しない子がいたとしても、答えがわからないのか、間違えることが怖いのか、人前で話すことに強い緊張を感じているのかによって、必要な支援は異なります。

不登校についても同じです。目に見える行動だけで判断するのではなく、その背景に何があるのかを丁寧に考えることが大切だと思っています。

整理する視点 確認する内容 例
最初のきっかけ 休み始める前後に何があったか 発表で失敗した、友人と気まずくなった、進級した
それまでの背景 以前から負担が積み重なっていなかったか 教室で緊張していた、授業を理解しにくかった、疲れを隠していた
現在の負担 今、登校や生活を難しくしているものは何か 欠席理由を聞かれる不安、未提出課題、体力の低下

例えば、友人との行き違いで休み始めた子が、その後に相手と仲直りできたとします。それでも「教室に入った瞬間に注目されそう」「授業がどこまで進んだかわからない」と感じていたら、仲直りだけでは負担がなくなりません。

このとき必要なのは「もう解決したのに、なぜ行かないの」と説得することではなく、今の心配を確認することです。欠席理由を皆の前で聞かない、課題の提出範囲を調整するなど、別の対応が必要な場合があります。

 

「原因不明」「無気力」という言葉だけで理解を止めない

以下のことをおさえておくことも重要です。

理由がわからないことと、負担がないことは違う

子どもが「わからない」と答えたとき、考えることを避けているとは限りません。いくつもの出来事が重なっていたり、気持ちと身体の感覚を言葉にするのが難しかったりすることがあります。

本人には「校門の前で足が止まる」「日曜の夜から苦しくなる」という感覚があっても、その説明になる出来事を思い出せない場合があります。説明ができるまで登校や相談の判断を保留する必要はありません。

「どうしたの?」と尋ねても、うまく答えられないことがあります。しかし、安心できる関係の中で、時間をかけたり、ノートに気持ちを書いたりすることで、少しずつ伝えられる思いもあります。子どもが言葉にできないことと、子どもの心の中に何もないことは、決して同じではありません。

「何もしたくない」の前に起きていたことを見る

何もしたくない様子だけを見て、やる気の問題と判断すると、休む前に続いていた緊張や疲れを捉えにくくなります。「意欲がない」という評価を、「いつから、どの活動が、どの程度難しくなったか」という観察に置き換えてみましょう。

文部科学省委託の要因調査では、教師・本人・保護者の回答を比較し、それぞれから見える関連要因を検討しています。大人から見える様子だけで、本人の経験をすべて説明できるとは限らない点が、原因を整理するうえでも大切です。

話したくない理由を、無理に推測しない

「親を心配させたくないのだろう」「先生をかばっているはず」と周囲が推測することもあります。しかし、推測を本人の本音として扱うと、話しづらさを増やす可能性があります。

「今は話したくないなら大丈夫。困っていることを少し減らせるようにしたい」と伝え、本人が話せる相手や方法を選べるようにします。保護者より、スクールカウンセラーなど第三者の方が話しやすい場合もあります。

 

原因を見誤りやすい5つの場面

原因を見誤りやすい場面は、以下の5つです。

1.家では元気なので、学校も大丈夫だと思う

家で笑う・動画を見る・趣味を楽しむことと、教室で一日過ごせることは同じではありません。家では自分で休憩を選べても、学校では人の視線・音・時間割・評価などに合わせる必要があります。

「楽しめることがあるなら問題ない」と結論づけず、場所や相手、活動内容によって負担がどう変わるかを見ます。家で安心できる時間があることは、その子を理解するための情報にもなります。

2.友達がいるので、人間関係は原因ではないと思う

親しい友達がいても、クラス全体や部活動、グループ内の立ち位置に緊張している場合があります。「仲のよい子はいる?」だけではなく、「休み時間は気が休まる?」「誰にも合わせなくてよい時間はある?」と場面を具体的にすると、別の負担が見えることがあります。

3.成績がよいので、勉強の不安はないと思う

点数が高くても、間違えることを強く恐れたり、期待に応えるために無理を重ねたりする場合があります。結果だけでなく、宿題にかかる時間、提出前の不安、テスト後の落ち込みなど、学習にかかっている負担を確認します。

4.ゲームやスマホが、不登校のすべての原因だと思う

ゲームの時間が増えたことが気になっても、「休む前から増えていたのか」「休み始めてから増えたのか」で考える順番は変わります。本人にとって、時間を過ごす手段や、人とつながる場所になっている可能性もあります。

一方で、睡眠や食事を崩すほど利用しているなら、その影響も確認が必要です。原因か結果かを急いで決めず、利用の前後で体調や生活がどう変わるかを整理します。すべて取り上げれば登校できる、と単純には考えないようにしましょう。

5.保護者の接し方だけで説明しようとする

家庭での関わり方を見直すことはできますが、それだけで原因を説明しようとすると、学校での出来事や本人の体調が見えにくくなります。保護者が自分を責め続けることも、支援の負担になります。

私が大切にしたいと思うようになったのは、「どうすれば息子を自分の望む方向へ変えられるか」ではなく、「息子が自分の人生を歩んでいくために、母親として何ができるか」という視点です。

親の願いと子どもの願いが、いつも一致するとは限りません。だからこそ、まずは子どもの思いを丁寧に聴くことが重要です。

 

不登校の原因を整理する4つの手順

不登校の原因を整理する4つの手順は、以下の通りです。

1.評価を入れず、わかっている事実を書く

最初に、本人の話、保護者が見たこと、学校からの説明を分けて記録します。「怠けている」「友達が原因に違いない」といった評価や推測は、事実と同じ欄に入れないようにします。

記録例:月曜の朝7時半に腹痛を訴えた。本人は「2時間目が嫌」と話した。学校からは「前の週に発表の予定を伝えた」と聞いた。発表と腹痛の関係は、現時点ではわからない。

保護者が学校への不信や不安を感じていても、その気持ちを持つことと、事実確認を分けておくと相談を進めやすくなります。記録は本人を監視するためではなく、同じ説明を何度も求めずに支援者へ共有するために使います。

2.休み始める前から、現在までを時系列で並べる

欠席が始まった日だけでなく、その前の遅刻、保健室利用、帰宅後の疲れ、行事やクラス替えなども振り返ります。ただし、出来事が近い時期に起きたというだけで、因果関係があるとは言えません。

本人が「それは関係ない」と話したことを、周囲の推測だけで原因にしないようにします。時系列は仮説を立てる材料であり、答えを決めるものではありません。

3.つらい場面と、比較的楽な条件を並べる

「学校が嫌」という言葉を、登校準備、通学、教室に入るとき、授業、休み時間、昼食、下校に分けて考えます。同時に、どの条件なら少し負担が小さいかも確認します。

負担が大きい場面 比較して確認する条件 相談できる調整例
皆がいる教室へ入る 人が少ない時間や別室ではどうか 入室時間や動線を相談する
その場で発言を求められる 事前に内容がわかるとどうか 予告や書面での回答を相談する
たまった課題を見る 一つだけ選ぶとどうか 提出範囲や優先順位を調整する
登校後に疲れ切る 短時間や休憩を含む予定ではどうか 滞在時間と休憩場所を相談する

これらは選択肢の例です。本人の同意や学校の体制を確認し、一つの方法に誘導しないようにしてください。比較するために無理な登校を試す必要もありません。私は教員として、一人ひとりに必要な支援を考えることが、公平な教育につながると考えています。

4.原因の断定より、小さな調整と振り返りを行う

「提出物の量を減らす」「学校からの連絡を保護者経由にする」など、一度に変えることを絞ると、本人がどう感じたかを確認しやすくなります。

調整後も登校できなかったからといって、本人の話が間違いだったとは言えません。負担が複数ある、疲れが残っている、別の条件が合っていないなどの可能性があります。「できた・できない」だけでなく、不安や疲れがどう変化したかを聞きます。

 

理由を聞くときは、説明を求めすぎない

理由を聞くときのポイントは、以下の通り。

「なぜ?」を、答えやすい具体的な質問へ変える

「どうして学校へ行けないの?」は、大人にとっては自然な質問でも、子どもには答える範囲が広すぎることがあります。一度にいくつも聞かず、話せそうなときに一つだけ尋ねます。

・「明日のことで、一番気になっているのはどの場面?」
・「授業中と休み時間なら、どちらが疲れる?」
・「学校からの連絡は、今は直接来ない方が楽?」
・「今すぐ答えなくてもいいけど、減らしてほしいことはある?」

選択肢を示すと答えやすい場合もありますが、どれかを選ぶよう迫らないことが大切です。「どれでもない」「まだわからない」も回答として受け止めます。

話す以外の伝え方も用意する

紙に書く、メッセージを送る、絵や色で表す、気になる場面に印をつけるなど、方法を選べるようにします。数字でつらさを表す場合も、点数の上下で登校を判断しないようにしましょう。

本人が話した後は、すぐに解決策を返すより「それが気になっていたんだね」と内容を確かめます。学校へ伝える必要があるときは、何を、誰に、どのように共有するかを本人と相談します。危険がある場合は、安全確保のために大人へ共有する必要があることも説明してください。

 

学校には「原因を知っていますか」より具体的な情報を確認する

学校の説明と本人の話が違う場合、どちらかがうそをついていると即断しないようにします。見ている場面や、受け止め方が異なる可能性があります。相談では次のように、観察できる情報を確認します。

・欠席が増える前に、遅刻、保健室利用、授業中の変化はあったか。
・休み時間、班活動、給食、部活動では、どのように過ごしていたか。
・本人が負担だと話している場面で、学校は何を確認できているか。
・提出物や評価について、本人が誤解している点はないか。
・相談内容を校内で誰が共有し、窓口を誰にするか。
・本人に登校を促す前に、どのような環境調整が可能か。

いじめや暴力など安全に関わる疑いがあるときは、通常の登校調整と分けて対応を求めます。本人同士を会わせれば解決するという前提を置かず、接触を避ける方法、連絡の窓口、事実確認の進め方を相談してください。

担任だけで話が進みにくい場合は、管理職、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、教育委員会などにも相談できます。相談内容と次の確認日を短く文書で残すと、対応を共有しやすくなります。

 

小学生・中学生・高校生では、確認する場面を変える

学年だけで原因を決めることはできません。ただし、生活や学習の仕組みが違うため、話を聞く場面は調整できます。

段階 確認する場面の例 聞き方の工夫
小学生 登校準備、教室の活動、給食、先生への質問 一日の流れを絵や時間割で見ながら、気になる場面を選んでもらう
中学生 教科ごとの授業、部活動、グループ、成績や進路 家庭で話したくないことがある前提で、第三者への相談も選べるようにする
高校生 履修、単位、通学、進路、学校選択とのずれ 制度上の期限や選択肢を学校に確認し、本人が判断する材料を整理する

「小学生だから親と離れられない」「中学生だから反抗期」とひとくくりにすると、その子の事情を取り逃がします。本人が何に困っているかを軸に、年齢に合った伝え方を選びます。

 

原因がわからなくても始められる支援

すぐに始められる支援は、以下の通り。

本人が安心して休める条件を整える

毎朝の説得や、学校からの突然の訪問・電話が負担なら、連絡方法や時間を相談できます。「今日はどうする?」を何度も尋ねる代わりに、相談する時刻を決めるなど、見通しを持てる工夫もあります。

休むことを認めるのは、様子を見続けるだけという意味ではありません。睡眠、食事、痛み、気分、本人が安心できる時間を確認し、必要な相談につながることと組み合わせます。

学習は、遅れの全部を埋める計画から始めない

学習への不安があるときは、未提出課題をまとめて渡すより、今理解できるところを一緒に確認します。例えば、英語なら一つの例文、算数なら一問など、本人が取り組む量を選べるようにします。

学習できた日も「それなら学校へ行ける」と結びつけないようにしましょう。自宅や個別の場で学ぶ条件と、学校で過ごす条件は異なります。学びを再開できる場所を確保すること自体に意味があります。

体調の不安は、原因探しとは別に相談する

頭痛、腹痛、めまい、強い疲労、睡眠や食事の大きな変化が続く場合は、心理的な理由だと決めつけず、小児科などへ相談してください。症状が出る時間、続く長さ、生活への影響を記録すると説明の助けになります。

不登校という状態だけで、病気や発達上の診断が決まることはありません。家庭で診断名を当てはめるより、現在困っている症状や場面を伝えることを優先します。

 

保護者・学校・支援者で共有するメモの例

次のように一枚にまとめると、原因を一つに決めなくても次の相談を進められます。以下は説明のための架空例であり、実際の支援事例ではありません。

本人が話していること 「皆に休んだ理由を聞かれたくない」「英語の授業がわからない」
家庭で確認できること 登校の話題で黙る。夕方は短い会話ができる。
学校へ確認したいこと 入室時の対応、課題の優先順位、別室で学べる条件
まだわからないこと 友人との関係、授業以外の負担、本人が希望する連絡方法
最初に相談する調整 欠席理由を人前で尋ねない。英語の課題は一つに絞る。
振り返ること 登校できたかだけでなく、連絡への不安と課題の負担が変わったか。

本人の言葉を保護者の解釈で言い換えすぎないようにし、共有相手も必要な範囲に絞ります。「まだわからない」を残したまま相談して構いません。

 

不登校の原因について、よくある質問

よくある質問は、以下の通り。

原因がわかれば、すぐ登校できるようになりますか?

必ずしもそうではありません。出来事が解決しても、緊張、疲れ、学習や周囲の視線への心配が残っている場合があります。最初のきっかけと、現在の負担を分けて確認してください。

本人が理由を話すまで、何もできませんか?

理由の説明を支援の条件にする必要はありません。連絡の負担を減らす、体調について相談する、安心して過ごせる場所を確保するなど、わかっている困りごとから対応できます。

原因ランキングで上位の項目から確認すればよいですか?

調査は全体像を知る参考になりますが、回答者、質問、複数回答の扱いによって結果の意味は変わります。割合をそのまま目の前の子の原因の確率として扱わず、本人の経験と生活上の負担を確認しましょう。

学校では問題がないと言われたら、どうすればよいですか?

「問題がない」が、どの時間や場面を確認した説明なのかを聞きます。本人が困っている場面を具体的に伝え、学校に見えている様子と並べて整理してください。必要に応じて校内外の相談員にも加わってもらいます。

子どもを休ませたことが、不登校の原因になりますか?

休ませたという一つの判断だけで、不登校の原因を説明することはできません。当時の体調や安全、学校での負担などを含めて考える必要があります。過去の判断を責めるより、今必要な休養や支援を相談してください。

 

Think+では、原因を断定せず今の学習の負担を一緒に整理します

神戸・御影のThink+は、一人ひとりの理解度やペースに合わせた個別・少人数の学習支援を行っています。学校に通いづらい時期も、学習への不安や、今できることから相談できます。

「何がわからないのか、本人もうまく説明できない」「たまった課題を見ると動けなくなる」といった場合も、最初から全範囲を進める必要はありません。現在の状況を伺い、取り組む内容や量を一緒に考えます。支援の内容はThink+のコース・料金をご覧ください。

お子さんの参加が負担になる場合は、保護者の方だけでの相談も可能です。教室の考え方や講師については講師紹介で確認できます。医療的な診断や治療が必要な困りごとは、医療機関や学校の専門職への相談と分けて考えます。

 

まとめ|不登校の原因探しを、負担を減らす相談につなげる

不登校の原因を理解するには、休み始めたきっかけだけでなく、それまでの背景と、今も残っている負担を分けて見ることが大切です。本人が理由を説明できないときも、つらい場面、比較的楽な条件、体調や生活の変化から相談を始められます。

文部科学省も、不登校を本人の問題行動として扱わず、個々の状況に応じて支援し、登校だけを目標にしない考え方を示しています。

「本当の原因を全部話してもらう」ことを急ぐより、「今の負担を一つ減らすには、誰と何を相談できるか」を考えてみてください。子どもも保護者も一人で答えを出す必要はありません。

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